mPharmaはガーナを始めてアフリカ諸国で薬局に薬の安定供給網を展開しているスタートアップ企業である。
サービス概要
アフリカで薬の供給網を築くことで多くの薬局で恒常的に発生している在庫不足を防ぎ、また薬代の高騰の原因になっている中間業者を排除し自社在庫から薬局へ直接薬を供給することで、患者に安全で手ごろな価格の薬を届けることに貢献している。
ノバテックやバイエルと言った世界中の大手製薬会社に独自の推測の元、必要な量の薬を一括発注、輸送することで購入費用を抑えている。
また、薬を自社で在庫することにより、適切なタイミングで必要な薬を薬局に届け薬局での在庫切れを防いでいる。
2019年現在、ナイジェリア、ケニア、ガーナ、ザンビア、ジンバブエと言ったアフリカ諸国で、毎月4万人を超える患者が訪れる200を超える薬局や病院に薬を供給するため在庫管理をしている。
また、流通網を整備することで薬代を最大30%も下げることに貢献し、病院からは患者からのクレームが25%も減ったとの報告も受けている。
企業基本情報
起業家情報
代表:Gregory Rockson
出身:ガーナ
学歴:Westminster Collegeにて学士号取得
会社概要
企業価値:不明
サービス提供国:ガーナ
従業員数:68
ホームページ:https://www.mpharma.com/
推定資金調達額合計:$21.3M
推定年間売上高:$3M
参照元:https://www.owler.com/company/mpharma
事業沿革
- 2014年 ガーナでサービス開始
- 2015年 $5M資金調達の発表、Social Capitalより(*1)
- 2017年秋 $6M資金調達の発表、インド人実業家Sunil Mittal, Shravin氏より(*1)
- 2017年9月 ジンバブエで国際赤十字と提携
- 2019年1月 シリーズBラウンドで$9M資金調達の発表(*2)
- 2019年3月 ガーナの業界2位のドラッグチェーン店『Haltons』を買収
- 2019年4月 $1.5M資金調達の発表、eBayの大株主Jeff Skoll氏より(*3)
参照元:
(*1)https://www.ft.com/content/66fb67e0-2398-11e8-add1-0e8958b189ea
(*2)https://ventureburn.com/2019/01/mpharma-secures-9-7m-series-b/
(*3)https://malaysia.news.yahoo.com/award-winning-start-targets-affordable-124420457.html?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAAGnNI3V03u1K0hOxzwSO3GrUjh17Ag6bXz4NH6sCfdctvNxJzgKLtl7bKefFV91Fy-bLJ5UgJddg38962DKPM2tVeZcm0OP55YE3bvW8aYD1QUM72IT-u4s742bIyJcfq7bDvns2-txU8oEF-9Hc9KPcrOeZ_JuLYdWF2XJHRc9H
設立までの背景
創業者の背景
Gregory Rockson氏は脊椎側彎症という病気を抱えている。この病気の治療のために両親が薬局まで薬を買いに行っても、在庫切れで手ぶらで戻って来ることが多々あり、この状況に不満を抱いていた。
このような経験により、多くの患者が治療を受けやすい医療モデルを作りたいと思うようになった。
当初は電子カルテを導入し病院と街の薬局を結ぶことで薬の在庫切れを防ぎ、患者が薬を購入しやすくなるよう
市場背景
アフリカには個人経営の薬局が多数あるが、薬の流通網は細かく分断されており、国際的にも多くの業者を仲介する。そのため、薬局では偽物の薬が出回ったり、価格の変動が大きかったり、供給不足による在庫切れが頻繁に発生している。
また個人経営の薬局はもちろん、チェーン展開をしている薬局でさえ大量購入できるルートをそのえておらず、小ロット注文により薬の仕入れ価格が高くなっている。
さらに、薬販売業者から薬を購入する時に各自で価格交渉をする必要があり、その結果、薬局毎の価格帯にも差が発生する。
中間業者のマージンにより、同じ薬でも薬代が西洋諸国の3倍にまで膨れ上がるケースがしばしば起こっている。規格外や偽の薬が市場に出回っているという問題もある。
欧米諸国に比べ薬代がとても高額なため、アフリカ諸国に住む中所得・低所得層の人々は病気になっても薬を買うのは容易ではない。子供の教育費か薬代のどちらを支払うかで悩む母親も珍しくない。
サービス詳細
世界中の大手製薬会社か一度に大量購入することで購入価格を大きく下げている。また購入した薬は自社で在庫している。
mPharmaとパートナー契約を結んでいる薬局は余分な在庫を持つことなく、また薬の有効期限切れに悩むことなく、安全な薬を必要な数だけmPharmaから安価で購入できる。
mPharmaは有効期限切れや偽造された薬が混ざらないよう、製薬会社や代理店の品質管理は欠かさず行い、常に安全な薬を提供している。
薬局や病院で、無料で入手できるMuttiカードという独自のカードを使用することで、多くのメリットを享受できる。そのメリットを詳しくみてきましょう。
薬局に薬を買いに来た人は、Muttiカードを使うことで、薬代の全額を支払わなくても、購入時、7%の割引が適応されるだけでなく、前金の支払いのみで薬を購入できる。残金の支払いはMuttiモバイルマネーを使って分割払いが可能である。
モバイルマネーでの決済を使うとポイントが貯まり、このポイントも支払い時に使用することができる。
薬代が高額であっても全額自己負担を強いられていたこれまでと比べると、低所得者層でも手軽に薬を購入できるようになった。
さらに、このカードを使用することで、週に1回決められた曜日に無料で健康診断を受けることもできる。
このように多くのメリットを享受できるため、mPharmaとパートナー契約を結んでいる薬局に訪れる70%以上の人々が、Muttiメンバーに既に登録している。
mPahrmaはMuttiカードの使用履歴を通して薬の使用データを集め、このようなデータを求めている研究機関に提供することでも利益を得ている。
サービス拡大の秘訣
ノバテックやバイエル、ファイザーと言った世界的な大手製薬会社とパートナーシップを結び大量購入することで薬の購入価格を下げている。そして薬の供給網を確保し在庫切れを防いで安価で薬を供給している。
薬の仕入れ価格を抑えられた病院は病院の設備の補充や職員の教育に余った費用を回すことができ、mPharmaと提携することで良い循環を生み出せている。
提携先の薬局や病院、患者はインターネットクラウドサービスで結ばれており、どの病院でどういう処方箋が出されたのかが薬局側で情報を入手でき、また医者もどこの薬局にどの薬がどれだけあるのかを互いに把握できるため、薬を必要としている人がより容易に薬を入手できるようになった。
このクラウドネットワークを使い、それまでアフリカでは存在しなかったADR(薬物有害反応)に関する情報も共有できるようになった。
また、Muttiカードとモバイル決済と組み合わせることで、低所得者でも安価で薬を購入できるサービスを導入している。
ジンバブエでは2017年9月に赤十字病院と提携を結び、mPharmaの大量発注によって安価で入手した薬を、赤十字が既に築いている薬局と医療サービス施設のネットワークを活かし、安定的に供給することに貢献している。
参照元:
https://medium.com/mpharma-insights/start-with-the-patient-and-end-with-the-patient-bbbcc585ad17
今後の展開
アフリカで消費されている99%の薬は輸入されている。よって、大手製薬会社と提携を結びより安価で安全な薬を購入できるようにする。
アフリカで最大の薬の供給網を築くことを目指しており、次はコートジボワールでサービス提供する準備を進めている。
メモ書き:同業他社
GoodRx
ホームページ:https://www.goodrx.com/
2011年に創業したサンタモニカに本社を構えるアメリカ企業。アメリカ国内の薬局で販売されている薬価格を比較できるアプリを開発、薬のクーポンを提供。
- 2011年11月 $1.5Mシード資金調達
Blink Health
ホームページ:https://www.blinkhealth.com/
2014年に創業したニューヨークに本社を構えるアメリカ企業。薬局で薬の受け取りの代行や、薬を自宅まで配送するサービスを展開。
- 2016年 シリーズAラウンドで$75M資金調達
- 2017年 シリーズBラウンドで$90M資金調達、8VCより
SEMPRE HEALTH
ホームページ:https://www.semprehealth.com/
2015年に創業したサンフランシスコに本社を構えるアメリカ企業。同社とはソフトウェア分野で競合している。
- 2018年8月 シリーズAラウンドで$8M資金調達の発表
アメリカ国内をマーケットにしている企業ばかりで、アフリカをマーケットに事業展開している企業はいない。サービス提供地域の差別を図り、またガーナ一国に絞らずアフリカ諸国でサービス展開を図ることで、mPharmaの独自性を築いている。