M-KOPA Solarはアフリカ、ケニアの首都ナイロビを拠点とするスタートアップ企業である。M-KOPA Solarは電力が行き届いていないエリアにソーラーパネルの割賦販売(※1)を行っている。
サービス概要
まずはソーラーパネル、ラジオ、コントロールユニット、LED、携帯電話の充電器がセットになったM-KOPA Solar 5を購入する。
頭金の2999ケニアシリング(約3150円)を準備し、一日あたり50ケニアシリング(約50円)を420日間つまり、1年間と少しの間支払い続ける。支払いが終わると、そのセットが完全に購入者のものになるというサービスだ。アフリカだけでなく東南アジアでも見られるRent for own方式である。
この毎日の支払いにはモバイルマネーM-PESA(※2)を利用している。もし支払いが滞った場合、コントロールユニット搭載されたSIMカードによって遠隔操作で発電を停止するため、料金の未払いや盗難を防ぐことができるようになっている。
(※1)割賦販売とは
商品、サービスの代金を分割で支払う販売方式のことで、支払いの間隔によって週賦・旬賦・月賦・年賦などがある
(※2)M-PESAとは
ケニアのモバイルマネーで携帯電話によって送金、出金、支払いのすべてのできるサービス。ケニアのGDPの約5割以上の額のお金がM-PESAで動いており、利用率は非常に高い。
企業基本情報
起業家情報
代表:CEO兼共同創始者 ジェシームーア(Jesse Moore)
出身:カナダ
学歴:オックスフォード大学でMBAをノースカロライナ大学チャペルヒル校にてBAを取得
会社概要
企業価値:不明
サービス提供国:ケニア、ウガンダ共和国、タンザニア
従業員数:1000人(2018年)
ホームページ:http://solar.m-kopa.com
企業理念:MAENDELEO (進歩)、UMILIKI (主体性)、UWAZI (明快)
事業沿革
- 2011 M-KOPA SolarはSignal Point Partners(※3)の支援により設立
- 2012.10 ケニアで販売を開始
- 2013.4 ソーラーパネル売り上げ1万台を達成
- 2013.6 2万台を達成
- 2013.11 4万台を達成
- 2013.12 ウガンダへ進出
- 2014.4 6万台を達成
- 2014.9 東アフリカで10万世帯へ電力を供給
- 2014.10 グローバルグリーンテック企業トップ100に選出される
- 2014.12 タンザニアへ進出
- 2015.3 ウガンダで2万軒に電力を供給
- 2015.5 東アフリカで20万世帯へ電力を供給
- 2016.1 東アフリカで30万世帯へ電力を供給
- 2016.2 ソーラー駆動のテレビを発売
- 2016.8 ケニアでテレビの売り上げ1万台以上を達成
- 2017.1 グローバルクリーンテック企業トップ100に選出される
- 2017.4 東アフリカで50万世帯へ電力を供給
- 2018.1 ソーラー駆動のテレビを9万軒に販売
- 2018.5 三井物産がM-KOPA Solarへの出資に参画
- 2018.12 住友商事がM-KOPA Solarへの出資に参画
- 2019.1 東アフリカで70万世帯以上へ電力を供給
※設立から2019年現在までに計11回の資金調達により合計1億6千百八十万ドルを集める
(※3)Signal Point Partnersとは
2009年から2011年まで、モバイルマネーやモバイルサービスベンチャーの事業の立ち上げを支援していた組織。Shell Foundation、CGAP、FSD Trust(Kenya)、DOB Foundationなどから資金を得て、M-KOPA Solarを含む3つの事業の立ち上げを支援した。
設立までの背景
このM-KOPA Solarを起業したのはジェシームーア氏だ。2002年にムーア氏は非政府組織(NGO)としてケニアを訪問した際に、都市から離れた農村でも携帯電話が使われていることを知り、「将来、携帯電話で何かできる」と感じた。
オックスフォード大学に進学しMBAを取得後にケニア戻り、モバイルマネーのM-PESAに就職しこのビジネスを思いついた。M-KOPA Solarの社名の由来はスワヒリ語の「借りる」という意味を持つkopaから名づけられたそうだ。
※参照元
http://solar.m-kopa.com/senior-management/
https://newswitch.jp/p/18424
https://gaiax-socialmedialab.jp/post-28328/
M-KOPA拡大の秘訣
かつて、ケニアの家庭の 8割は電力が行き届いておらず、照明などはジェネレーターと灯油などの燃料を利用していた。燃料を使用するデメリットとしては火災の危険性、人の健康や環境への悪影響、騒音がある。さらに、その燃料にかかる費用は1日当たり50ケニア・シリング(約50円)ほどかかっていた。またジェネレーターも高価な為、夜はロウソクに頼っていた。
M-KOPA Solarの最も手ごろなセットの一日当たり支払う金額と同額だが、M-KOPA Solarのセットがあれば照明としてだけでなく、電気を発電することができる。
また、最初の一年間と少しの間支払いをしてしまえば、その後は無料で電気を使用できるので、最終的にかかる費用はM-KOPA Solarのほうが安くなるだろう。またジェネレータに比べ、初期費用もM-KOPA Solarの方が安かった。
現在では、ケニア人の7割が電力網にアクセスできるとケニア政府が主張していることから分かるように、そのような状況も改善したようだが、依然として電力の安定供給には問題がある。まず安定していないということである。週に何度か電気が途切れたり、ひどい場合には一日以上電気が使えないこともあるようだ。
次に切断されるということである。電気料金が未納の人々の電気を遮断するとその他の人も電気を使用できなくなってしまい、彼らが料金を支払うまでの間電気は使用できないのだ。
さらに、電気を繋げるための費用が高いということである。電力網に接続するための費用の1万5千ケニア・シリング(約1万6千円)だけでも高額にも関わらず、電力網に接続するための配線、スイッチなどの備品も自分たちで購入する必要があり、結果的にM-KOPA Solarの1月当たりの費用2万4千ケニア・シリング(約2万5千円)よりも高額になってしまうのだ。
そのため、電力網に接続できる人であってもバックアップとしてや追加の電力源としてM-KOPA Solarを導入するのだ。
今後の展開
また、M-PESAの利用率の高さからもわかるようにこれから電力の需要はますます高くなっていくだろう。その需要に対応するためにM-KOPAも製品の種類を増やしている。
8wのソーラーパネル、コントロールユニット、LED、ラジオ、充電器がセットになったもの、ソーラーパネル、テレビ、テレビアンテナがセットになったもの、ソーラーパネル、100lの冷蔵庫、電球、充電器がセットになったものまででてきている。
このようにして、電気を発電する手段とテレビや冷蔵庫などを一緒に割賦販売することで生活の質を上げることにも貢献している。また、テレビを見れるようになったことで選挙の際に候補者を今までより詳しく知ることができ、民主主義の発展にも影響を与えた。
これからもM-KOPA Solarは東アフリカのライフラインとして人々の生活を明るくし続けるだろう。
補足
隣国のエチオピアでは同じく太陽光から割賦販売を行うHallosolarがいる。以下を参照。
HelloSolarはエチオピアの未電化地域への太陽光発電システムの割賦販売を行うスタートアップである。親会社はBelcashである。サービス概要HelloSolarは、エチオピアにおいて個人向けのSola[…]
※参照元
https://wired.jp/2012/10/20/kenya-solar-wirelesswirenews/
http://www.m-kopa.com
https://cleantechnica.com/2019/04/27/off-grid-solar-in-kenya/
https://www.crunchbase.com/organization/m-kopa#section-overview
https://www.mitsui.com/jp/ja/topics/2018/1226148_11233.html
https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/news/release/2018/group/11080