MPost(Mobile Post Ofiice) はケニアのスタートアップである。住所を持たない人に携帯電話を通じて「仮想住所」を発行し、郵便物を届けるサービスを提供している。
サービス概要
携帯電話の位置情報を利用して、電話番号を「仮想住所」として登録できるサービス。年間300ケニアシリング(約300円)で、手紙、小包など郵便物の発送や受け取りができる。
荷物の受け渡しは郵便局と連携している。登録した郵便局に受取人の手紙(荷物)が届くと、SNSで受取人に通知が送られる。受取人は、郵便局での引き取りか、自宅までの配達(追加料金)を選択することができる。
引越しや、休暇などで住む場所が変わっても、登録の郵便番号を更新すれば、新しい住所に郵便物を届けてもらう事もできる。
住所が未整備のケニアでは、今まで郵便物を受け取るには、郵便局に私書箱を登録し、それを自分で定期的に確かめに行くという方法しかなかった。私書箱は共有のものが多く、他人に郵便物を盗まれる心配もあった。
MPostのサービスで、たくさんの人が自分の住所を持つことができ、就職機会の創出や生活の利便性向上などにつながっている。
企業基本情報
起業家情報
代表:Abdulaziz Omar and Twahir Mohamed
出身:ケニア
学歴:KENYA METHODIST UNIVERISTY/ Jomo Kenyatta University of Agriculture and Technology.
生年月日または年齢:30代後半
会社概要
企業価値:不明
サービス提供国:ケニア
従業員数:1000ー5000人
ホームページ:https://mpost.co.ke/mpost/
推定資金調達額合計:2000万アメリカドル
事業沿革
- 2016年6月 MPostを創設
- 2018年7月 Startupbootcamp AfriTech programme in 2018に参加
- 2018年7月 Startupbootcamp (*1)からの資金調達(金額不明)
- 2019年1月 HAVAÍC(*2)から資金調達(金額不明)
- 2019年8月 利用者が4万人を超える
- 2019年12月 HAVAÍCより2度目となる190万ドル資金調達
(※1)Startupbootcamp とは
欧州発の国際的アクセレーター。本拠地はイギリスのロンドン。
(※2)HAVAÍCとは
南アフリカに拠点を置くVC(ベンチャーキャピタル)。アフリカの初期段階のテクノロジー系ビジネスに投資している。
市場背景
MPostのサービスが始まる前のケニアでは、住所は全人口の1%のみにしか与えられておらず、郵便物を受け取るには、郵便局に私書箱を借りる必要があった。
その私書箱も大抵の場合、他人と共有される為、郵便物が他人に見られたり持ち去られたりするリスクがあった。また郵便物が私書箱に届けられても、それが通知されるシステムはなく、企業や政府からの採用通知など大切な書類も放置されるなど問題は多かった。
ここで目を付けたのが、100%を超える保持率の携帯電話だった。携帯電話と郵便を結びつけるサービスは、M–PESAという携帯送金システムを世界に先駆けて導入したケニアならではの視点から生まれたものだろう。
試験運用で提携した郵便局では当初6ヶ月で200件の契約を目指したが、需要は非常に高く、1500件を達成した。人々はMPostにその利便性と安全性を見出した。
Postal Cooperation of Kenya と連携、ケニア全土にある638の郵便局を利用し、サービスを都市部から国境付近の小さな村まで届ける事を可能にした。
2016年にMPostを正式に創設してからも利用者の声を聞きながら、改良を重ねた。登録までに5分ほどかかっていた時間を30秒に短縮したり、紹介者に紹介料を払うキャンペーンなどが功を奏し現在は4万5千人の利用者を獲得している。
代表のTwahir Mohamedは、今ラウンドで調達した資金はケニアでの市場拡大の為の広告費に使いより広いシェアを目指すとしている。その後は隣国のウガンダやルワンダ、東アフリカ市場への進出も視野に入れている。
サービス詳細
MPostへの登録方法は以下の手順で行う。
①登録用のUSSD番号(*890*90#)にアクセスする。
②IDナンバーを入力する。
③利用したい場所の郵便番号を入力する。
④紹介者の有無、いれば紹介者の携帯番号を入力する。
⑤M-PESA(*4)のPINコードを入力し、支払いを完了すれば住所が発給される。
(*4)M-PESAとは
ケニアの電子マネーシステム。携帯電話で送金、出金、支払いまでできる。