『SunCulture』太陽光とIoTを用いた灌漑システムで小規模農家の生産性向上

SunCultureは、小規模農家向けにポンプ式の太陽光発電灌漑システムを販売するケニア国のスタートアップである。

IoTとAIといったIT技術を駆使し、小規模農家に金融サービスを提供することで、小規模農家の営農活動バリューチェーン全体を支援するサービス体制を形成しようとしている。

サービス概要

SunCultureは、独自開発の灌漑用ポンプRainMaker2、及びオフ・グリッド太陽光発電システムであるClimateSmartTMを組み合わせたオフ・グリッド太陽光発電灌漑装置を主要な商材としている。

また、それに付随して、装置使用方法のトレーニング、金融サービス、栽培技術に関わるサービスを小規模農家向けに提供している。

同社のポンプを活用することで、農家は川や井戸から直接水を引き入れることが出来る。そのため、農家は高額な給水タンクの購入費、水の運搬に要する費用や時間(17時間/週)を節約出来、別の生産活動に割り当てることが出来る。

更には、ClimateSmartTMは、他の機器と共にIoTプラットフォームを形成し、AIの高機能学習アルゴリズムと結びつけることで、リアルタイムの分析・アドバイザリーサービスを提供出来るようなシステムが形成されている。

AIサービスにはマイクロソフト社クラウドプラットフォームAzureが活用されている。その結果、ClimateSmartTMを使うことで、農家は遠隔地からも灌漑システムのモニタリングと最適な運用が可能となり、営農の効率性と生産性を高められるようになっている。

例えば、付随の高機能リチウムイオンバッテリーにはインターネット機能が搭載され、メンテナンス時期を予測出来るようになっている。

また、ワイヤレスの土壌センサー、気象観測設備がIoTプラットフォーム上でつながり、天候、灌漑や施肥のタイミングも予測可能になっている。

※参照元:
https://shellfoundation.org/news/sunculture-announce-new-iot-enabled-rainmaker2/
http://www.sunculture.com
https://www.reeep.org/projects/solar-powered-irrigation-kenya-sunculture
https://azure.microsoft.com/en-gb/blog/ai-iot-insider-labs-helping-transform-smallholder-farming/
http://mercycorpsagrifin.org/wp-content/uploads/2019/04/SunCulture-Case__Final.pdf

企業基本情報

起業家情報

代表:Co-founder & CEO Samir Ibrahim
出身:USA(推定)
学歴:ニューヨーク大学スターン・スクール卒(ファイナンス・国際ビジネス・経済開発)
年齢:31~33歳(2019年時点、推定)

※参照元:
https://www.linkedin.com/in/samiribrahim/

会社概要

企業価値:不明
サービス提供国:ケニア、ルワンダ、ソマリア、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、エチオピア。
従業員数:51-200人(正確な数字は不明)。
ホームページ:http://www.sunculture.com
推定資金調達額合計:USD5.9M以上(正確な数字は不明)。

※参照元:
https://www.linkedin.com/in/samiribrahim/
https://www.solutions-summit.org/innovation/sunculture-agrosolar-irrigation-kit

事業沿革

  • 2012年頃、ニューヨーク大学ベンチャーコンペティションにて2位となる。将来性を見込まれ、友人や家族から合計約USD200Kのシードマネーを得る。それを資本にケニア国にてパイロットプロジェクトを開始し、点滴灌漑用の太陽光発電ポンプの販売を開始。
  • 2012年10月、SunCultureをケニア国ナイロビに設立。
  • 2015年9月、GSMA(※1)よりシード向け補助金を獲得(金額不明)。
  • 2015年12月頃、USAIDらが拠出するPowering Agriculture: An Energy Grand Challenge Development (PAEGC)プログラム(※2)よりアグリビジネスにおけるイノベーション向け補助金を獲得(USD2M)。
  • 2017年1月、ForbesのForbes 30-under-30のエネルギー部門のチェンジメーカーの1人にCEOのSamir Ibrahimが選出。
  • 2017年4月、Aster(※3)、Partners Group(※4)及びEnergy Access Ventures(※5)からのシリーズB調達を発表(USD700K)。
  • 2018年6月、Financial Times及びInternational Finance Corporation(世界銀行グループ)共催の革新的ビジネスアワードにおいて、優秀賞(the award for Excellence in Transformational Business)を受賞。
  • 2018年7月、EDFグループ(※6)、Energy Access Ventures及びPartners GroupよりUSD3Mのデット・ファイナンス調達を発表。
  • 2019年1月、新製品RainMaker2 with ClimanteSmartTMの販売開始。
  • 2019年9月、アフリカ開発銀行のオフ・グリッド発電事業向けFacility for Energy Inclusion’s Off-Grid Energy Access Fund (FEI-OGEF)から、在庫を抵当とした運転資本を補填するための資金調達を発表(金額不明)。

その他、正確な時期は不明確だが、MicrosoftのMicrosoft Airband Initiative(※7)より補助金を獲得しており、また、Shell FoundationやMITからも支援を受けている。

(※1)GMSAとは
携帯電話通信会社の国際的な業界団体。750以上の通信会社と約400の携帯電話関連企業から組成される。

(※2)PAEGCとは
USAID(The United States Agency for International Development)、Duke Energy Corporation、OPIC(The United States Overseas Private Investment Corporation)、SIDA(Swedish International Development Cooperation Agency)、BMZ(German Federal Ministry for Economic Cooperation and Development)らが拠出する政府系の資金援助プログラム。持続可能なクリーンエナジーにおけるイノベーションを通して、途上国の農業分野に貢献するビジネス向けに資金援助を行う。2012年から2019年にかけて合計USD47.1Mを投資予定。

(※3)Asterとは
アメリカに拠点を置くベンチャー・キャピタル。エネルギー、製造業、モビリティ分野に特化し、ヨーロッパ、北米、中国で投資及び資産運用を行っている。

(※4)Partners Groupとは
スイスに拠点を置く投資管理会社。プライベートインフラ、プライベート不動産に強みを持ち、欧米豪アジアで展開する。

(※5)Energy Access Venturesとは
フランス拠点のプライベート・エクイティ兼ベンチャー・キャピタル。テクノロジー、エネルギー分野に特化する。

(※6)EDFグループとは
元フランス国有のフランス電力会社が構成する企業グループ。2004年11月にユーロネクスト・パリに上場し、民営化。現在はフランス政府の株式保有率は80%以上程度。

(※7)Microsoft Airband Initiativeとは
ブロードバンドにおける世界的なデジタル・デバイドを縮小させるための支援を行うプログラム。資金、技術、メンタリング、ネットワーキングやその他支援をスタートアップ向けに行う。

※参照元:
http://www.sunculture.com/index.php/press/#1568618897143-47fa8202-f7d3
https://www.linkedin.com/company/sunculture-kenya-limited/
https://www.ft.com/content/cf52b0b2-2c98-11e6-bf8d-26294ad519fc
https://www.gsma.com/mobilefordevelopment/mgrantee/sunculture/
https://www.crunchbase.com/organization/sunculture-2#section-overview
http://mercycorpsagrifin.org/wp-content/uploads/2019/04/SunCulture-Case__Final.pdf
https://solarmagazine.com/microsoft-airband-initiative-leverages-solar-energy-close-digital-divide/

設立の背景

創業者の背景

東アフリカに祖先のルーツを持つ現CEOのSahir Ibrahimは大学ではファイナンスを主な専攻していたが、大学時代より民間主導の経済開発と開発課題の解決に関心を持っていた。

2011年のある時、共同創設者であり、Ibrahimの友人であるCharles Nicholsが太陽光発電ポンプの農業への活用のアイディアをIbrahimに相談し、議論したことが起業のきっかけとなった。

市場背景

ケニア国は全人口のうち73.5%が地方に居住し、地方人口の80%が農業に従事している。そのため、慢性的な貧困の削減、雇用創出のために農業セクターの成長が不可欠であったが、国土の80%は降雨量が少ない地域であり、また降雨量の予測がつきにくく、農業用水の供給が不安定な傾向にあった。

また、灌漑面積は灌漑可能領域の4%にしか満たず、更にはディーゼル発電に頼った灌漑用ポンプが環境汚染や炭素排出量の増加をもたらしていた。

更には、多くの農家が天水農業に適した栽培種を栽培しない傾向にあり、栽培種に偏りが生まれていた。

また、農家の一部は洪水灌漑に依存するケースもあったが、土壌侵食や土壌からの栄養素の流出などの問題がもたらされていた。

Ibrahimは、このように灌漑が行き届いていないことで生じる問題が原因となり、農家の生産性向上、食糧安全保障と農家の購買力向上が妨げられていると考え、起業を決意。

また、ケニア国はそもそも日照時間が長く、太陽光発電のポテンシャルも大きかった。加えて、太陽光発電と電機ポンプ技術の成熟度合も考慮すると、農業セクターは、温室効果ガスの増加を防ぎつつ、生産高の改善、農家の生計の向上をなし遂げる上で、魅力的な市場となっていた。

ビジネスモデル

1つ目は、農家の効率性と生産性向上の観点からの製品設計である。同社の点滴灌漑システムは、既存の水使用量80%の節水を可能としている。

また、施肥を植物の根に直接行えるようになっており、農産物の品質向上と供給の安定化、300%を超える生産量の向上を可能としている。

また、同システムは労働、燃料、肥料への支出削減を促し、年間で1エーカーあたりUSD約14,000のコスト削減を可能にしている。

そのコストインパクトがあるため、農家によっては、より高付加価値で利益を得やすく、かつ適切な灌漑を必要とするマルベリーや唐辛子の栽培を始めることが出来るものも現れている。

2つ目に、農家のバリューチェーンに寄り添ったサービスラインの拡充である。

商材である灌漑システムは、営農活動のバリューチェーン上のR&D時点に対するに支援に位置付けられるが、加えて、生産性向上のためのスキルアップ支援、土壌分析などのサービスもR&D支援として提供されている。

また、商流を下り、いざ農産物を収穫したのちの市場参入や市場調査の支援サービスも提供されている。

更には、農家の運転資本への支援も行っており、農家の農産物の買取保証制度や’Pay-As-You-Grow’といった独自の支払方法を認めている。

例えば、小規模農家にとって販売圏の拡大は難しく、多くは地元の市場で農産物を販売している。その点に対して、SunCultureは仲介業者と提携し、小規模農家の農産物買取を保証することで、収入が安定するよう支援している。

また、‘Pay-As-You-Grow’は、農家が可処分所得が増える農産物の収穫期において、SunCultureから購入した製品に対する支払いを認めることで、資本を持っていない農家が製品を利用しやすいようにするスキームである。

SunCultureの製品はコストが高く、伝統的なマイクロファイナンスが融資出来る水準を超えているという問題点を持っている。

また、多くの小規模農家にとって主流の商業銀行からの借入は、高い利子率と銀行が要求する抵当を準備出来ないという問題点のために、実行されにくい。

加えて、農家が製品を使用するタイミングに製品の代金を支払うことを認める’Pay-As-You-Go’スキームでは、農家が製品を必要とするタイミングで請求分の支払金が準備されないために、農家がポンプを必要な時期に活用できないリスクを伴っていた。

そこで、SunCultureは’Pay-As-You-Grow’スキームを取り、小規模農家が資本不足のために、生産性の向上が妨げられるようなことがないよう、確実に設備投資が出来るようスキームを設けている。

顧客視点という観点の他に、SunCultureがビジネスを拡大させることが出来た背景として、メディアを巧みに活用したマーケティング戦略を展開したことがあげられる。

同社製品のアーリーアダプターのサクセスストーリーを広報して、その魅力を訴えつつ、東アフリカ最大手のマイクロファイナンス銀行と提携することで影響力と信頼感を手に入れた。

また、同提携を通して、同マイクロファイナンス銀行の商圏に進出して、顧客を増やす試みも行っている。

※参照元:
https://www.ft.com/content/cf52b0b2-2c98-11e6-bf8d-26294ad519fc
https://www.reeep.org/projects/solar-powered-irrigation-kenya-sunculture
https://www.reeep.org/sites/default/files/REEEP%20-%20Solar%20irrigation%20brochure.pdf
https://www.forbes.com/sites/nyuentrepreneurschallenge/2012/12/09/from-nyc-to-nairobi-interview-with-sunculture-audience-choice-award-winners-2011-12/#18f54b94ec97
http://www.fao.org/3/x9895E/x9895e02.htm
https://plantafruit.org/2014/11/22/mulberry-farming-and-sericulture/

サービス詳細

SunCultureはRainMaker2 with ClimateSmartTMを扱っているが、バッテリー付きのRainMaker2 with ClimateSmart BatteryTM、及びバッテリーが付いていないRainMaker2 with ClimateSmart DirectTMの2種類を販売している。

RainMaker2 with ClimateSmart BatteryTM

RainMaker2 with ClimateSmart DirectTM

 

前者は1時間あたり2,500L、70mの深さまで稼働させることが出来る。後者は1時間あたり1,100L、30mの深さまで稼働させることが可能である。

また、オプションとして、Shakti社(※1)のポンプと点滴灌漑システムを販売している。

前者については、1時間あたり最大30,000Lまで汲み上げ可能なポンプを揃えており、RainMaker2 with ClimateSmartTMを購入した際に、顧客の要望に応じて水量をカスタマイズ出来るようになっている。

点滴灌漑システムについてもRainMaker2 with ClimateSmartTMを購入した際に、顧客の希望に応じて、追加することが出来る。SunCultureによると、点滴灌漑システムを活用すると、生産高を300%向上させ、同時に水使用量を90%まで減らすことが出来る。

(※1)Shakti社とは。
インド国に拠点を置くポンプ製造メーカー。家庭用、工業用、園芸用、農業用の製品を揃えている。アメリカ合衆国、オーストラリア、UAEに支社を持ち、世界100カ国以上に展開する。

※参照元:
https://www.ft.com/content/cf52b0b2-2c98-11e6-bf8d-26294ad519fc
https://www.reeep.org/projects/solar-powered-irrigation-kenya-sunculture
https://www.solutions-summit.org/innovation/sunculture-agrosolar-irrigation-kit
https://www.reeep.org/sites/default/files/REEEP%20-%20Solar%20irrigation%20brochure.pdf
https://en.wikipedia.org/wiki/Shakti_pumps

最新情報をチェックしよう!