BiscateはUX社がモザンビークで展開している人材派遣のサービスである。
サービス概要
WEB上に求人ボードを掲載。労働者はWEB上に掲載されている求人に応募することで、雇用者とコンタクトをとれるようになる。
しかし特徴は、スマートフォンではない携帯電話からも応募が可能であるという点だ。ユーザーは携帯電話から*777#を入力すると「氏名・職業・場所」の入力を求められる。
それを送信すれば応募が完了し、雇用主から連絡がある。このサービスはWebを経由しないのでインターネットがない地域でも利用する事が可能だ。
企業基本情報
起業家情報
代表:フレデリコ・シルバ
出身:不明(モザンビークか)(?)
年齢:不明
学歴:IMM Graduate School of marketing
経歴:2008,9-2008,11 Delta Corporation
(マーケティング・アシスタント)
2008,11-2010,4 Suretel Communications
(マーケティング&セールスマネージャー)
2010.5-2011,6 MultiChoice
(マーケティング&セールスマネージャー)
2011,9-2011,11 Rio Tinto
(コンサルタント)
2011,12-2013,12 LG Electronics
(カウントリー・マネージャー)
2012,9-現在 UX Information Technologies Lda
(設立者兼マーケティングパートナー)
URL; https://www.linkedin.com/in/frederico-p-silva-4b149737
会社概要
企業価値:財務諸表がないため不明
サービス提供国:モザンビーク
従業員数:不明
ホームページ:https://www.ux.co.mz/
推定資金調達:不明
事業沿革
- 2012 UX社の設立
- 2016 Biscateのサービス供用開始
- 2017 ユーザー数46000人、25000の事業者が登録
- 2018 Financial Times and IFC Transformational Business Awardにて最優秀賞を獲得
参照元:
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/dc0d01678915e238/20180042.pdf
https://clubofmozambique.com/news/biscate-wins-a-high-commendation-at-the-financial-times-and-ifc-transformational-business-awards/
市場背景
モザンビークでは元来、求人が木に括り付けられているものを労働者は探し出して見つけなければならない状態が続いていた。
国内のインターネット使用者は30パーセント、普及エリアはわずか9%と限られておりであり、通常のインターネット回線を用いるような求人サービスは十分に普及しなかった。
UX社はBiscateをローンチする前にempregoというサービス名の求人WEBサービスをスタートさせたが使われずにすぐにBiscateに変わった。
参照元:
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/dc0d01678915e238/20180042.pdf
サービス詳細
インターネット回線を使用せずに低価格端末の電話回線を用いて、*777#を発信し、名前と場所・職業を入力すると自動的にBiscateに登録される。
雇用側は専用のアプリもしくはデータベース上の求人情報にインターネット回線からアクセスし、求職者情報を参照する事ができる。
雇用主側は、実際に仕事をした後に口コミで星評価ができる様になっている。これで評価をあげればより多くの仕事が舞い込んでくる仕組みだ。
以下の画像の様に星を絞り込んで求職者を検索することも可能だ。
※Biscateホームページより
利用料金は公表されているデータが見当たらないものの、料金の徴収の仕組みとしては、まず求職者は登録の段階で少量ながら登録料を請求される。
次に、事業者は、求職者のデータベースにアクセスするために購読料を徴収される。最後に、求人広告を掲載する企業は、その掲載料の請求も受ける。
サービス拡大の秘訣
拡大の背景として、サービスの対象者がインターネット回線に接続することができない低所得者層としているところだ。
いくつかの求人サイトは存在するもののWEBにアクセスできる層は中間層が多く、弁護士や医師、建築士などの専門職を身につけた人材に偏ってしまう(全てではないがその様な層が多い)。
しかし、実際に日常生活で必要な仕事は水漏れだったり、塗装をしたり、車の修理など、ブルーカラー向けが多かった。
このような背景において、安価な携帯電話を用いて、電話線で求人にサービスを展開できるようにしたというのは、技術の水準をあえて落として市場のニーズにマッチさせる戦略として、モザンビーク内で上手く機能したといえる。
市場の不足と、現地の人々の暮らしの様子、家計の様子を熟知したからこそ取れた戦略であり、ひとえに代表者のマーケティング担当としての手腕が導いた成功であるといえる。
SWOT分析
ここではSWOT分析(※1)からBiscateを考察する。
Strength(強み)
この会社の強みに関して。第一に考えられるのは地の利を生かしたビジネスである。使用言語がポルトガル語であるという点から、他国籍企業にとってはそれだけで十分な参入障壁になる。
また、上記の通り、電話回線を用いて求人情報を扱っているためにインターネット回線がつながっていない国や地域を対象にしたビジネスを展開することができる。
国内初の求人ボードシステムであるというのも先行特権を確保できるため、強みといえる。特にモザンビークは国内のインターネット利用率が3割程度と低水準であることが企業の提供する価値とマッチしている。
Weakness(弱み)
次に弱みに関して。弱みは、技術面の参入障壁が低いことである。ローテクを駆使してビジネスを展開しているために模倣可能性も十分にありうる。
他国の参入は使用言語によって避けられるが、モザンビーク内で競合が今後現れる可能性が高い。
また、ビジネスモデルにおいても、通常登録料を取らないものが多く、競合相手がその形態をとった時に現在の市場を十分に確保できるかというのは怪しいところになる。
また、ローテク故、他国に進出した際には言語という参入障壁すらなくなる、模倣されやすいビジネスとなる。
この場合、競合をいたずらに発生させ、価格競争に巻き込まれていく可能性が考えられる。
Opportunity(機会)
次に機会について。機会は世界各国でインターネット回線が十分に浸透していない地域が依然として残っていることがあげられる。
グローバルノートの公表しているデータによると、2017年の段階ではインターネット利用率がアフリカや東南アジアでは依然として低い水準にある。
例えばケニアでは17.83%といった水準となっている。こういった地域が依然として残っている現状は、Biscateの展開するビジネスのとっては十分な機会になると考えられる。
Threat(脅威)
最後に脅威について。脅威は世界的な開発の動きである。
現在、インターネットが十分に普及していない地域では市民の購買力が低く、インターネットに割く費用が家系から十分い支払われていない点があげられる。
こういった背景に対して、アプローチし、成功したのが今回のビジネスなのだ。つまり市場が成長し、国民が十分な購買力を持った時が脅威になるといえる。
現在のところ、大きな投資の動きはないが、経済発展の援助が本格化するにつれて、インターネットが国民全般に普及した時が、このビジネスがアイデンティティを失い、転換を求められる脅威になりうるだろう。
(※1)SWOT分析とは
Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)から戦略やビジネス機会を導き出す方法
今後の展開
SWOT分析でも述べた様に今後は、何らかの手法で、参入障壁を構築する動きをしなくてはならない。
またローテクであるという強みであること以外に、通常の人材派遣とは異なる価値を提供できるようにしていくことで、仮にインターネット普及率が上がったとしても採用されつづけるような仕組みを作り出す必要がある。
そのうえで、未だにインターネット普及率の低い国々に対して、進出していくといったことも十分に可能性としては考えられる。