『Kudi』 月間6億円以上を取引、ナイジェリア発のファイナンシャルアプリ

Kudi は、ナイジェリアのスタートアップである。

サービス概要

個人向けの金融サービスアプリを展開している。

ユーザはスマートフォン上で、他のユーザへの送金・現金引き出し・携帯電話や電気の料金支払いなどを行うことができる。

企業基本情報

起業家情報

代表: Yinka Adewale (機械工学 学士)
出身: ナイジェリア
学歴: Obafemi Awolowo University

代表: Pelumi Aboluwarin
出身: ナイジェリア
学歴: ナイジェリア Obafemi Awolowo University (電子工学 学士)
イギリス ブリストル大学 (コンピュータ科学 修士)

会社概要

サービス提供国: ナイジェリア
従業員数: 50~100人程度
ホームページ: https://kudi.com/
推定資金調達額合計: 500万ドル~

事業沿革

  • 2016年 ナイジェリア・ラゴスで設立される。YCombinator (※注記1) の支援を受ける。当初は、Facebook や Skypeを利用したチャットボットサービスだった。
  • 2017年 月間1億ナイラ(約6,000万円)の取引を実現。専用スマートフォンアプリをリリースする。
  • 2018年 月間10億ナイラ(約6億円)の取引を実現。
  • 2019年4月 Partech (※注記2) から500万ドルの投資を受ける。

(※注記1) YCombinator ・・・ 2005年に創業された、カリフォルニア州のシードアクセラレーター。スタートアップ企業への資金提供を行っている。過去には「Airbnb」や「Dropbox」も資金援助を受けた。

(※注記2) Partech ・・・ 1982年に創業された、パリのベンチャーキャピタル。セネガルの首都ダカールに支社を構える。140余りのシード企業、ベンチャー企業へ資金提供している。

※参照元:
https://kudi.com/about-us
https://partechpartners.com

設立までの背景

創業者の背景

Yinka Adewale は、2013年からおよそ2年間、Microsoftの社員として学生向けのセミナー開催などを手掛けている。また同時期に、医療施設向けのクラウド金融サービス「clinicfy」を設立している。

Pelumi Aboluwarin は、2012年にニュース集約サービス「Qwikgist」を開発し、学生時代から精力的に新事業を立ち上げている。

市場背景

アフリカでは、今でも90%以上の金銭取引が現金で行われている。その一方、人口あたりのATM普及率は、日本の10分の1以下であり、現金の調達は多くの国民にとって大変手間のかかる作業である。モバイル送金の潜在的な市場規模は大きい。

また、ナイジェリアでのPOSを利用した決済は、年間2億件にも及び、キャッシュレス化の機運が高まっている。Kudi が提供しているような、現金を扱う必要のない、モバイル上での財務管理システムには高い需要があると考えられる。

アフリカでは、携帯電話が広く普及している。2015年の統計によると、人口の46%にあたる約6億人が利用しているという。家庭に電気は引かれていないが、携帯電話は持っているという人も珍しくない。生活手段のひとつとして、携帯を用いた決済サービスへの需要は高い。

現在の市場の問題点

ナイジェリアでは、携帯電話普及率は80~90%にも及ぶが、インターネット普及率は40%程度である。また、携帯市場の半数近くはガラケーが占めており、スマートフォンを所有していない人も多い。

そのため Kudi は当初、インターネットを利用せず、電話回線だけで使用できるサービスを展開していた。また、Facebookメッセンジャーや Skypeなど、既存アプリの機能を利用して金融決済ができることを売りにしていた。

しかし、現在では自社開発のスマートフォンアプリに軸足を移しており、当初の方向性とは相違が見られる。一見すると、スマートフォンでしか利用できないサービスへの移行は、ナイジェリアの市場ニーズから遠ざかっているようにも思える。

ただ、2023年には国民の85%近くがインターネットを利用するようになる、という統計データも存在する。また、2025年にはスマホユーザが1億4,000万人に増加するという予測も存在する(現在のナイジェリア人口は約2億人)。未来の顧客を取り込むべく、機敏に方向性を変えたと評価することも可能だろう。

※参照元:
https://medium.com/@partechpartners/why-we-invested-in-kudi-the-nigerian-leader-in-digital-payment-and-collection-platform-195e34fb39b5
https://nibss-plc.com.ng/wp-content/uploads/2019/01/POS_Analysis_2018.pdf
https://www.statista.com/statistics/183849/internet-users-nigeria/
https://www.statista.com/statistics/467187/forecast-of-smartphone-users-in-nigeria/
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/nigeria/data.html
https://medium.com/@jamesagada/at-8-atms-per-100-000-people-why-is-nigeria-not-growing-her-atm-population-b437b8f3eabe

サービス詳細

Googleストアからアプリをダウンロードし、名前などの個人情報、電話番号、銀行口座情報を入力すれば、すぐに利用できるようになる。アプリ内部に「ウォレット」が作られるので、銀行口座から入金を行う。

「ウォレット」内のお金は、他ユーザへの送金、電気・テレビ代金の支払いなどに使用することができる。

「ウォレット」に入金したお金を、店頭に置かれたPOSの決済に利用することができ、ATMに行って現金を引き出す手間を省くことができる。基本的な利用料金は無料だが、POSを使用した決済には0.7%の手数料が掛かる。

※参照元:
https://kudi.com/faq

競合について

Paga

ナイジェリア・ラゴスに本社を置く、金融サービス企業。ユーザ間での送金を、モバイル上で簡単に行うことができる。スマートフォンアプリ、ウェブサイト、USSD (※注記1) から利用できる間口の広さも魅力的。

2018年には Global Innovation Fund (※注記2) から1000万ドルの投資を受けており、エチオピア・フィリピン・メキシコへの世界展開も構想している、強力な競合他社である。

(※注記1) USSD ・・・・ 海外で広く使われている、SMSに似た通信システム。特定の電話番号にかけることで、個人情報の照会や各種支払いなどを行える。日本人の場合、ナビダイヤルの自動音声システムをイメージすれば分かりやすいだろう。

(※注記2) Global Innovation Fund  ・・・・ ロンドンに本部を置く非営利団体。発展途上国のスタートアップ企業に対して、累計1億ドル近くの投資を行っている。

KongaPay

元々、通販サイト「Konga.com」で使っていた決済サービスを、一般向けに展開している企業。小売店側と一般消費者側の両方に、サービスを展開しているのが特徴的である。

小売店側にはQRコードの作成機能を提供し、消費者にはそれを利用したキャッシュレス決済の仕組みを提供している。また、小売店のウェブサイト上に、決済サービスのプラグインを簡単に組み込む方法も案内している。小売店と消費者の両方を、顧客として取り込もうとする意思が伺える。

Opay

2018年にナイジェリア・ラゴスで創業された金融サービス。ユーザ間の送金、公共料金等の支払い、銀行口座からの引き出しなど、類似のモバイルサービスを展開している。5000万ドル以上の資金を調達している。

メッセンジャー機能による差別化

サービス開始当初は、FacebookメッセンジャーやSkypeなど、既存アプリの機能を利用して金融決済ができることを売りにしていた。ユーザがわざわざ新しいアプリの使い方を覚える必要がなく、慣れ親しんだアプリの延長線上として金融決済をすることが可能であった。

しかし、今では Kudi 専用のスマートフォンアプリを運用しており、競合他社と比較したときのメリットは見えにくいものになっている。

POSの無料提供

現在ナイジェリアには14万台以上のPOSが設置されている。Kudi は一定条件を満たした企業に対して、POSの無料提供を行っている。Kudi 一社のみの利益につながるわけではないが、国内全体のキャッシュレス化の傾向を強め、市場規模の拡大を図る狙いがあると考えられる。

※参照元:
https://www.mypaga.com/index.html
https://techcrunch.com/2018/09/06/paga/
https://www.kongapay.com/

今後の展開

現在は、創業当初の理念とは異なり、インターネットを利用した自社専用スマホアプリの運用へと、方向性を変えている。将来の国内IT事情を見越した動きと評価することもできるが、そのおかげで他社とのサービスの違いは、一見しただけでは分かりにくいものになってしまった。

POSの無料提供など、着実にナイジェリア国内のキャッシュレス化を進めており、業界内での存在感を高めようとしている。今後、どのような目立ったサービスが展開されるか、動向が注目される。

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