『Retail Capital』融資先5000超え!中小企業向け融資をMCA方式で行う

Retail Capitalは、南アフリカのフィンテック関連、特に中小企業向けに融資を行うスタートアップである。

サービス概要

Retail Capitalのサービスは、小売業者やレストラン経営者らに事業運転資金を提供している。2011年の設立以降、起業を目指す人々や組織のパートナーとして、レストランや小売業者、ビューティーサロンなど5,000を超える中小企業に、総計12億ランドを融資している。

Retail Capitalは、売上のうちカード決済の比率が高い企業を融資先としている。これは融資先の小売業者の売上のうち現金が多いと、記録が残らない為、収益額の予測が難しくなり、虚偽の申告なども起こり得る為である。

その点、デビット、クレジットなどのカードで顧客が支払えば、記録が残るため、カードでの支払った売上収益の10%を返済するなどと取り決めができる。また、Retail Capitalの特徴として、資金提供は原則MCA(後述)で行われている。

MCAとは?

マーチャントキャッシュアドバンス(Merchant Cash Advance)融資を受けた中小企業の近い将来の売上収益の一定額を、融資元(ここではRetail Capital)への返済に充てる方法を指す。

近い将来の売上には、現金、各種カード(クレジット、デビットなど)などが含まれる。売上にクレジットカード分が含まれるだけで、返済に融資先の中小企業が持つクレジットカードが使われるわけではない。

また、融資に対する担保の有無という点では、実質的な有産無産の担保はないといえる。見方によっては、近い将来の売上収益の一定割合である返済額が担保となるが、融資時点での担保に該当する物件等での保証とは違うことになる。

融資額の返済額額や返済周期は、中小企業の近い将来の売上収益を元にすることから、中小企業の過去6か月間の売上収益を元に、中小企業と融資元が合意した条件で決められる。

ただし、合意条件は、たいていの場合、融資元が持つ過去の融資データ(融資した中小企業への融資額や返済周期といった詳細)などを元に算出される。

MCAの利用例

一例を挙げる。融資元A(以下A)が、中小企業B(以下B)から設備投資用を目的とした100,000ドルの融資を申し込まれた。

Aは、各種カードや現金を含んだBの過去6か月の売上平均を算出する。算出額は月平均に直すと30,000ドルだった。

Bは1年前にビジネスをはじめ、売上がビジネス開始後から毎月微増していることから、Aは毎月の売上平均額の11%(Aによる融資の金利ほかの手数料を含む)を返済に充てる案をBに示す。

融資希望額は100,000だが、Aへの金利や手数料約1%を引いた99,000ドルの融資を受ける。ただし、返済総額はAへの金利や手数料約1%を含む100,000ドルとなる。

Bは、カードや現金での毎月の売上収益の11%をAに返済していき、100,000ドルになった時点で返済完了となる。なお、売上収益の返済割合を増加するオプションも可能とする取り決めもできる。

企業基本情報

起業家情報

代表:Karl Westvig(CEO)
出身:南アフリカ共和国
学歴:University of Cape Town
生年月日または年齢:不明

会社概要

企業価値:不明
サービス提供国:南アフリカ共和国
従業員数:全従業員は不明だが、営業コンサルタントは40人
ホームページ:https://www.retailcapital.co.za/
推定資金提供額合計:12億5千万ランド(約830億米ドル、設立以来の金額)

サービス立ち上げまでの背景

創業者の背景

Retail Capitalの創業者であるKarl Westvigは、Retail Capital立ち上げ前に自身が1999年に友人と興したFoschini Group(※3)の消費者金融事業であるRCSで豊富な資金を得た。この資金を元手にRetail Capitalを設立したため他社からの資金調達は行なっていない。

Karl WestvigらRCSの経営陣は2005年に、南アフリカのスタンダード銀行が行ったRCSの45%の株式取得により、十分な資金を得た。

Karl Westvigは、この株式売却益を使い、Retail Capitalを設立した経緯がある。Retail Capital設立時の市場環境についてKarl Westvigは、あるインタビューで次のように話している。

“カード利用率が高いという南アフリカの市場は、MCAが機能するために必要な条件だった。これは融資先である中小企業の毎月の収入をPOSシステムの売上記録をチェックして遡り、MCAでの融資額を決められる第一のポイントに合致していた。さらに融資時に取り決めた周期(毎週、毎月など)で、同じく取り決めた一定額(カードでの売上額の割合、例えば10%)を回収する、という第二のポイントにも通用することを意味していた”

“South Africa is a high card-usage market, which is what you need for merchant cash advance products to work. You need to be able to track the monthly income of an SME to determine the size of cash advance they qualify for, and collect the loan repayments through POS (or point of sale) card machines.”

以下は創業者Karl Westvigのインタビュー動画である。

(※3)Foschini Groupとは
本社を南アフリカ共和国のケープタウンに置く、衣料品小売り会社である。

※参照元:
https://www.entrepreneur.com/article/328796
https://au.linkedin.com/company/retail-capital-sa
https://www.retailcapital.co.za/sme-toolkit/

市場背景

Retail Capital設立時及び現在まで、南アフリカ市場はデビットカードやクレジットカードなどのカード支払いの浸透率、使用率が高い。

これは、Retail Capitalの事業の柱である融資先の中小企業を利用する顧客の支払いが、相対的にカードで行われる割合が多くなることに通じる。

つまり、融資先の売上に対する支払い割合が、カード利用が増えることで、カード利用支払い売上のうち、10%などの割合として取り決めた分の返済額も増えることになる。

このことは、定期的な返済額の割合も増えることにつながり、早期の融資額回収完了となれば、別の融資先に資金を回せることになるため、Retail Capitalにとっても適していた。

競合他社の動き

豊富な資金を用意し供給できる競合他社の市場への進出がRetail Capitalにとっての懸念。

似たような融資方法として同じくベンチャーキャピタルのInvoice Worxなどが存在するが、同社の融資方法はMCAではなく、POF(Perchase Order Finance=POファイナンス)で行なっている。

簡単に言えば、第三者としての会社(ここではInvoice Worx)が、資金を必要とする借り手に対し、投資家からの融資を受けやすいように在庫などを調査し、担保設定をする。MCAで行うRetail Capitalとは異なる。

※参照元:
https://www.retailcapital.co.za/faq/
https://www.retailcapital.co.za/sme-toolkit/

サービス詳細

資金を提供する中小企業に対し、Retail Capitalとの同意後に同意金額を中小企業の指定口座に一括入金することで融資が始まる。

担保はなく、Retail Capitalが決めた審査を通れば融資が行われる。公表されている審査基準として、事業を開始して最低3カ月経ていること、を挙げているが、ほとんどの例では、6カ月の事業運営実績が求められていた。

またRetail Capitalからの最低融資期間は同じく6カ月以上としている。MCAでの融資は、融資先の体力、つまり資産ベースまたは平均売上高に加え、従業員数の多寡といった会社規模などで決まってくるというケースバイケースになる。

このため、Retail Capitalが独自で決めている定額の利用料金は示されておらず、金利や貸し倒れ額などの諸条件も融資を受ける中小企業ごとに違ってくる。

※参照元:
https://www.retailcapital.co.za/faq/
https://www.retailcapital.co.za/sme-toolkit/

取引先の拡大

Retail Capitalを設立した当時、南アフリカ国内ではMCAを行っている会社はなかった。CEOのKarl Westvigは、MCAが将来的に同国での資金貸付分野で成長するであると確信していた。

MCAの成長を見越してのRetail Capital設立により、同業他社の競合相手が誕生するとともに、Retail Capitalに追随するであろうと考えてもいた。そんな設立当時に想定していた競合他社との差別化を図るために実施してきたことは社員への教育である。

優位性は社員の育成

Retail Capitalのスタッフに、自分たちがやるべき内容を徹底して理解してもらうようトレーニングすること。

つまり、現在全国に40人いるRetail Capitalの営業コンサルタントに、顧客へのアプローチ、MCAの方法をしっかり理解してもらうことである。

さらに営業コンサルタントに、こうした顧客とのやりとりは電話やメールで行のではなく、実際にコンサルタントが顧客のもとを訪れて説明するのが大前提とし、顧客の事業とお金の関係やお金が何のためにあるのか、マージンはどのくらいになるのか、といった具体的な数字を示しつつ、貸付計画を示すのだ。

こうしたコンサルタントの地道な努力は、すべてデータとして記録、蓄積されているので、今では、さまざまな貸付局面や借りたい相手への強力な援軍となっている。

さらに、顧客への貸付とMCAの十分な説明とコンサルタントへの信頼感もあって、顧客は自分が、自分の事業の返済を含めた資金の流れといった日々の売上額を正確に理解しているのだ。

※参照元:
https://www.retailcapital.co.za/faq/
https://www.entrepreneur.com/article/328796

今後の展開

南アフリカの従来通りの金融機関による市場への資金供給不足を補うことがRetail Capitalの今後の展開の柱だ。そのためには、中小企業が雇用を促進させられるよう、成長へ向けた努力に対して支援することである。

特に南アフリカの中小企業は、同国のGDPの50%、雇用の65%以上という数字を占めるほど、同国にとって大きな役割を担っている。そうした中小企業への運転資金を提供することがRetail Capitalの更なる成長につながることになる。

今後は、アフリカ全体の決済の電子化を通じて、アフリカ全土での金融包摂(※注記4)の推進に努力していく。

こうしたRetail Capitalによる金融関連分野での挑戦は、アフリカの金融関連市場で起こっている問題を解決するとともに、安価で革新的、スマートな金融商品を市場に提供できるようになると予想される。

また、アフリカの将来について、あるインタビューに以下のように答えている。

“アフリカ大陸の各地が近い将来、大きな消費基地となることを、多くのレポートが示している。人口も増えていくだろうし、諸費拡大が中流階級を増やす、そうなると消費へのシフトが起きます。消費が増えることで中小企業への資金提供も拡大し、Retail Capitalのような会社がアフリカ大陸での資金提供という役割を果たせることになるだろう”

“Many reports show Africa will have a large consumer sector in the near future. There will be demographic growth, and people moving into a middle-class environment will need access to consumer goods. We can play a big role there, providing funding for consumers to acquire goods, and SMEs to build their businesses across the continent.”

※注記4:金融包摂(Financial Inclusion)とは、従来よりも個々の信用を計測し、サービスを利用したいすべての人々に、信用、貯蓄、保険、決済といった基本的な金融サービスを利用できるようにする仕組みを指す。

※参照元:
https://www.entrepreneur.com/article/328796
https://manda.co.za/article/a-fintech-boost-for-africas-small-medium-enterprises
https://www.howwemadeitinafrica.com/meet-the-boss-karl-westvig-ceo-afb/44200/

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