『InstaDeep』物流、都市交通、製造、エネルギー課題をAIで解決

InstaDeep社は、英国に本社を置き、フランス、ケニア、ナイジェリアにも展開するチュニジアのAI(人工知能)を活用したサービスを提供するスタートアップである。

サービス概要

InstaDeep社は、クライアントが抱える物流、都市交通、製造、エネルギー課題に対する AI(人工知能)ソリューションを提供することで、その問題解決を実現するとともに、企業価値の向上を実現し、組織全体の効率化と事業速度の向上を実現する。

企業基本情報

起業家情報

代表:Karim Beguir
出身:チュニジア
学歴:
1997年~2000年 エコール・ポリテクニーク(フランス)
2000年~2001年 国立統計・行政経済学院(フランス)
2001年~2003年 ニューヨーク大学科学学部(米国)
年齢:40代中盤

※参照元:
https://www.linkedin.com/in/karim-beguir-2350161/

会社概要

サービス提供国:チュニジア、英国、フランス、ケニア、ナイジェリア
従業員数:60名以上
ホームページ:https://www.instadeep.com/
推定資金調達額合計:7百万ドル(2019年)

事業沿革

  • 2014年 チュニジア(首都チュニス)にInstaDeep社を設立
  • 2015年10月 英国にInstaDeep社を設立(ロンドンに本社機能を移転)。その後、パリ(フランス)、ラゴス(ナイジェリア)、ナイロビ(ケニア)に支店網を拡大
  • 2018年12月 神経情報処理システムに関する会議(於:カナダ、モントリオール)で独自AIを発表
  • 2019年5月 チュニジアの大手プライベート・エクイティ・ファンド「AfricInvest」が7百万ドルの投資を決定(米国籍投資ファンド「Endeavor Catalyst」も参加)

※参照元:
https://www.menabytes.com/instadeep-series-a/

設立までの背景

創業者の背景

InstaDeep社の共同創業者兼CEOであるKarim Beguir氏は、チュニジアで生まれ高等学校まで同国で教育を受けた。

その後、フランスの名門グラン・ゼコールであるエコール・ポリテクニーク、次いで仏国立統計・行政経済学院において、応用数学、統計学および経済学を修めた後、米国に渡りニューヨーク大学にて応用数学およびファイナンスの修士号を取得した。

このように同氏は応用数学、統計および経済理論の専門家であり、その知識および経験をベースとして、AIを活用したビジネスモデルを構築し、2014年にInstaDeep社を設立。

Beguir氏は、Google Developer Expertの資格を有しており、ICT分野における自らの知見を広く社会と共有すべく教育目的のイベントや会合を開催するなど、社会貢献への関心も高い。

市場背景

チュニジアは、地理的にEU市場に近接していることもあり、自由貿易協定により欧州・地中海沿岸諸国との経済関係を強化している。

同国の経済は、従来、農業および原油・リン酸資源に依存してきたが、近年では多角化が進み、製造業や観光、運輸、ICTといったサービス業部門に重点が移行している。このため、InstaDeep社が提供するAIによる業務合理化や効率化へのニーズは高く、今後市場の急速な拡大が期待できる。

2011年のチュニジア革命以降、民主化プロセスの進展に伴い景気回復が期待される一方で、国内地域間の経済格差、高失業率、物価上昇といった経済問題や、治安の悪化という別の懸念材料も浮上しつつある。

教育水準の高さ、特に科学技術分野の人材の豊富さが同国の特徴であり、そのICT、イノベーション促進の基盤を形成している。

就学率は99%、約1、200万人の人口に対し6、600校以上の教育機関が存在する。大学数は200以上、毎年6万5、000人以上の卒業生を送り出し、うち技術、ICT分野が35%を占める。

なお、チュニジアはフランスから独立後、教育水準の高さ、地理的優位性を活かし、欧州企業の製造基盤として発展してきた経緯がある。

また、歴史上、様々な国や人種、文化が流入したこともあり、アラビア語、フランス語、英語が話せる人が多く、外国文化への適応力なども高い。人件費やその他の経費が比較的安価であることも特筆すべき点である。

現在の市場の問題点

チュニジアのスタートアップは、分野を問わず全般としてまだ誕生したばかりという印象が強く、アフリカで最も注目される南ア、ケニア、ナイジェリアには投資額で遠く及ばない。

このため、アイデアがあっても国内での資金調達が困難であることから、優秀な人材がフランスなど先進国で起業するケースも多く、これが頭脳流出へとつながっている。同国の大企業はリスク回避の姿勢が強く、スタートアップへの出資に慎重な姿勢が、その成長を妨げているとの見方もある。

チュニジアは、2011年の革命で政治体制を一新させたものの、政府職員の入れ替わりは少ないのが実情であり、特に先進技術に対する理解・対応能力が十分とは言えない状況もある。

スタートアップ法の制定など、環境整備に向けた動きが一部見られるものの、引き続き支援が充分でないとの見方もある。このように、今後の政権の意向次第では、スタートアップ企業の業績に足かせとなるような諸施策が採用される可能性があり、これがリスクと言える。

※参照元:
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/c36fee9e2383ce10/20180058.pdf

サービス詳細

InstaDeep社は、クライアントが抱える物流、都市交通、製造、エネルギー課題に対する AI(人工知能)ソリューションを提供することで、その問題解決を実現するとともに、企業価値の向上を実現し、組織全体の効率化と事業速度の向上を実現することを目的としている。

具体的なサービスは以下のとおり。

物流

最先端意思決定AIシステムを通じて、クライアントのために、サプライチェーン全体における最適な需給バランスの把握だけでなく、絶えず変化・進化する顧客ニーズを的確に捉え、その競争力を維持するための商品需要予測と、マージンおよび価格最適化を実現。

都市交通

都市交通AIシステムによる交通量や乗客予測分析に係る高度な機械学習を通じて、意思決定の自動化と迅速化を可能とする。これにより、需要と交通量を効率よくかつ正確に予測することが可能となり、タクシーやバスの車両サイズ決定の自動化、乗客の目的地到着遅延の防止実現、およびカーシェアリングの効率化などを実現。

製造

AIをIoTデータに適用することで高度に専門化された製造業者のニーズに応え、故障予兆監視機能の提供を通じて無駄な時間の浪費を最小限に抑え、システムの信頼性を向上させる。AIによる視覚的な目視検査の実施、保守部品需要予測や個体識別サービスの提供などを通じて、各生産ユニット間の複雑な相互作用を管理・運営することで、サプライチェーンから、注文、在庫管理、保守そして検査までの全体工程を最適化。

エネルギー

コモディティ価格が激しく変動する昨今の世界情勢を踏まえると、石油およびガス産業にとり運用効率の向上は喫緊の課題。AIソリューションを活用することで、クライアントは自動化された業務フローを活用して、より効果的な設備投資と投資収益率の向上を確保できる。AIによる高度な予測および提案システムは、エネルギー生産の上流部分から、消費者への供給に係る下流部分まで、すべての工程において、そのパフォーマンスを評価するとともに、効率化のための方策を提案。

※参照元:
https://www.instadeep.com/solutions/

競合について

InstaDeep社の技術力は、2018年12月にモントリオールで開催された「神経情報処理システムに関する会議」における独自開発AIの発表でも分かるとおり極めて高く、チュニジアのみならず、アフリカ大陸全体を見渡しても将来有望なスタートアップであると言える。

本社をいち早く英国に移し、パリ(フランス)、ラゴス(ナイジェリア)、ナイロビ(ケニア)にも支店を設置するなど、将来を見据えた投資や新規顧客開拓も怠りなく、また、地域的に分散することでリスクヘッジにも努めている。このため、チュニジア国内でその存在を脅かす競合は見当たらない。

他方、同じくマグレブ地域の中進国であるモロッコは、チュニジア同様にフランス語を共通語としており、EU経済圏はもちろん、サブサハラアフリカ諸国、特に西アフリカ諸国とは緊密な経済関係を有している。ICT産業も盛んであり、AI技術を活用したサービスを提供する企業も多数存在するようである。

このため、対EU諸国や対アフリカ諸国で考えた場合に商圏が被るモロッコのAIソリューション企業との競争が今後激しくなるのではないかと考える。

事業の優位性

InstaDeep社はチュニジア人エンジニアが同国のエンジニアを集って立ち上げたグローバル企業との特色がある。2015年のロンドンへの本社機能移転後もCEOであるBeguir氏はその共同創業者とともに、チュニスに残って事業を続けているとのことである。

また、Beguir氏は事業の傍らで、将来のICT産業の発展や若者の能力開発のためにイベントや講演会を実施しているとも聞く。このような地元に根ざした地道な活動は、同社の知名度を高め、その支援者を形成することにつながるため、チュニジア国内での事業成功、拡大に間接的ながら大きく寄与するのではないかと考える。

また、チュニジアは周辺国と比較して教育水準が高く、特にICTや科学技術分野で多くの良質な労働力を提供する力がある。このため、InstaDeep社がチュニジア国内で企業活動を拡大する際に、比較的安価で良質な技術者や労働力にアクセス可能であることも、同社の発展に大きく寄与するものと考える。

特に、同社はその方針として、アフリカ人の才能を活かすべく、適切で質の高い人材による職業訓練に基づき、アフリカでのAIに裏付けられた雇用拡大を志向している由であり、その活動は、チュニジアのみならず、アフリカ各国からの好印象をもたれるのではないか。

今後の展開

最大の関心事は、国内の安定である。2016年を最後に大規模なテロ事件は発生しておらず、G7各国およびチュニジア当局は治安が安定しつつあると評価している。今後とも安定した政権運営が行われるとともに、安全が確保されることが、InstaDeep社を含むスタートアップ各社の成長にとり最も重要な点となるであろう。

また、2018年4月に発効した「スタートアップ法」の定着、安定運用にも注目したい。同年10月に同法の細則(デクレ)が施行されて以降、2019年1月には中央銀行から各銀行に対し「スタートアップ外貨口座」開設等に関する通達があり、スタートアップ認定委員会のメンバーの選任が2月に行われるなど、運用開始に向けて準備が進んでいる。同法の運用が軌道に乗れば、InstaDeep社の活動拡大にも寄与することになろう。

いずれにせよ、InstaDeep社のAIは同社が独自開発したものであり、その能力の高さは国際会議の場でも証明されている。創業から5年が経ち顧客ニーズの把握や提供するサービスの改善面でもノウハウが蓄積されてきている。このような状況に鑑みるに、チュニジア国内での同社の比較優位性は当面維持されるものと考えられる。

最新情報をチェックしよう!