Lazadaは東南アジアを中心に巨大なマーケットを構築するBtoCのECサイトを持つスタートアップ企業だ。2012年に設立され急速な発展を見せている。
現在はShopeeやAmazonとも競合する形になっているがLazmallのローカライズされた様々な仕組みにより優勢となっている(詳細は後述)。
サービス概要
日本人にとって馴染み深いECサイトの例としてAmazonが挙げられる。Lazadaの利用方法はAmazonとほとんど同じだ。
Lazadaのマーケットプレイスは主に2種類に分けられる。
- Lazamall
小売店業者に対して”Lazamall”というlインターネット上でモールを提供し、売買を行う場所を提供している。これは認定を受けたセラー(認定基準は後述)のみが出店できる形となっている。Lazamallは以下の動画の様な有名企業が名を連ねる。 - Lazmall以外
“Lazmall”以外のカテゴリも存在し、ここでは認定を受けていないローカルセラーも出品が可能だ。取り扱う商品の幅は広く、家電や、アパレル、おもちゃなどが取り扱われている。食品は乾麺等日持ちするものを中心に取り揃えられている。
LazmallはLazadaから認定を受けたセラーのみが参加可能なので、新興国でよく見られる偽造や詐欺などの心配がなく、消費者が安心して買い物ができるのが特徴だ。
企業基本情報
起業家情報
代表: Peng Lei
出身:中国
学歴:Hangzhou Institute of Commerce(後にZhejiang Gongshang Universityに改称)
生年月日または年齢:46歳~47歳(2019年時点)
※現在アリババグループが経営権を握っており、創業者は異なる。
会社概要
企業価値:10億ドル(2017年買収時)
サービス提供国:インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム
従業員数:8000名以上
ホームページ:https://www.lazada.com/
推定資金調達額合計:約6億4千7百万ドル
事業沿革
- 2012.5 インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムで創業開始。4月にJPモルガンが非公開出資を行う。
- 2012.6 タイに第一号配送センターが設立される。
- 2012.11 スウェーデンの投資会社Kinnevik(※注記1)が4000万ドルの出資を行う。
- 2012.12 プライベートファンドSummit Partners(注記※2)が2600万ドルの出資を行う。
- 2013.1 ドイツの小売業者Tengelmann(※注記3)が2000万ドルの出資を行う。Lazadaで同時期に配達2日間保証サービスが行われる。
- 2013.6 アンドロイド端末用のアプリケーションが発表される。
- 2013.12 Tesco、Access Industries、Kinnevik、そしてVerlinvestから2億5000万ドルの出資を受ける。
- 2014.1 5億5000万人の東南アジア購買者に対して販売路を確保するための本部を香港に設立する。同時期、スマートフォンでの市場開拓のためiOSアプリを開発する。
- 2014.12シンガポール政府系ファンドのTemasek Holdingsから2億ユーロの出資を受ける。
- 2015.7 販売業者用のアンドロイドアプリを開発する。
- 2016.4 アリババグループが約10億ドルで買収し、経営権を握る。
- 2017.6 アリババグループが経営権確保のため株式の取得を進め、約83%の経営権を握る
- 2018.8 LazStar大学を、アリババビジネス学校とタオバオ大学と共同で設立する。
(※注記1)スウェーデンのストックホルムに本拠を置く投資会社。1936年に設立される。特に長期的な投資で有名。
(※注記2)ボストンに本拠を置く、プライベートファンド。1984年に設立される。ベンチャーキャピタルなどを手掛ける。
(※注記3)ドイツに本拠を置く小売業者。1867年に設立される。雑貨やディスカウントストア、DIY製品、家具が主力である。
※参照元
https://www.lazada.com/our-story
https://www.forbes.com/sites/ryanmac/2014/07/31/samwer-brothers-billionaires-rocket-internet-ipo/#4a83866b58ac
https://techcrunch.com/2012/11/12/samwers-online-shopping-mall-lazada-gets-40m-from-kinnevik-to-push-the-amazon-model-in-asia/
https://thenextweb.com/asia/2013/01/22/lazada-rockets-amazon-clone-raises-8-digit-euro-investment-to-develop-its-e-commerce-marketplace/
設立までの背景
創業者について
Lazadaの創業者は、Alexander Samwerである。彼はドイツ出身の起業家で、様々なビジネスを巨大企業に売却している。起業を行いバイアウトすることによって巨額な利益を生み出す起業家だ。
Lazadaの設立には、世界規模のECサイトのAmazonの影響がある。ビジネスモデルのスタートはAmazonを模倣している。アマゾンの本格的な東南アジアへの進出は2017年であり、Lazada設立の約5年後であった。
簡単にAlexanderの起業履歴を見てみると、AlandoというCtoCのオークションハウスを1999年にe-bayに売却、そして、携帯事業のJamba!をVerisignに売却している。その後Lazadaバイアウトまでは、設立の2012年から約4年間という短期間で成功している。
市場背景
Lazadaの様なECサイトが成功した背景にはネットが一般に広く普及し、スマートフォンが一般化したのが要因だ。
またECサイトの普及には、物流インフラの改善もある。GojekやGrabなどの配車サービスの普及によって交通インフラの整備が進んだことでより正確に、早く商品が届けられる様になった。
※参照元
https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2018/10/1030.html
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/h29reportv2.pdf
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM27H0C_X20C17A7EAF000/
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000127169.pdf
サービス詳細・マネタイズ
配送時間
基本的な配送方法だと、国内だと3日から7日で商品が届き、追加の料金を支払うことで配送手段を変えることができる。グロバールコレクションの項目で越境購入をする場合には、エコノミー配送があり時間はかかるが配送料も安くなる。
サブスクリプション
Live upというサブスクリプションを行うと、提携ショップからの配送料が無料になる(AmazonPrimeの様なサービス)。通常の配送だと約100円から130円程度となっている。決済も日本と遜色なく、様々な手段が用意されている。クレジットカードやペイパル、電子マネー決済などがある。
マネタイズ
Lazadaは商品が売れたら、その販売手数料としてカテゴリーにもよるが3%~5%の手数料と、2%の決済手数料がある。LAZADAでの売上は、2週間毎に銀行振込かPayoneerで送金される。これはAmazonともほぼ同じくらいだろう。
※参照元
https://liveup.lazada.sg/liveup/liveup-introduce/
https://kr-asia.com/alibabas-lazada-removes-commission-fee-in-spore-to-boost-transaction
https://sellercenter.lazada.com.my/seller/helpcenter/LazMall-Terms-and-Conditions.html
競合について
Lazada最大の競合はShopeeである。Shopeeは2015年にシンガポールで設立され、IPOによって資金調達を行った。Shopeeは、メルカリの様なCtoCをメインに行なっている。しかし最近ではBtoCも展開しているが、Lazadaが優勢である。
ローカライズされた取り組み
Lazadaが拡大したのは現地に合わせたシステム設計、ルールにある。以下でその詳細を記述する。
正規セラーと非正規の区別
Lazada拡大秘訣の一つに、正規セラーのみが参加できるLazmallと、ローカルセラーのマーケットプレイスを明確に分けた事が挙げられる。新興国ではありがちな商品の偽造を防ぐことがある。
アマゾンプライム対象商品のように、正規セラーにはLazmallのバッジが与えられる。万が一、Lazmallで偽造品を買ってしまった場合には、購入金額の2倍を購入者側に保証している。以下がLazmall出店基準である。
- 自社ブランドまたは正規ディーラーの証明
- 24時間以内発送率が95%以上
- セラー評価が70%以上
- チャットへの応答が85%以上
- セラー側の落ち度であるキャンセル率が2%未満
- セラー側の落ち度である返品率が1%未満
上記の基準に満たないセラーはLazmallでの出店が停止される非常に厳しい基準である。しかも上記の基準は認定された日から保ち続ける必要がある。そして、以下の様な状態になると2ヶ月基準でのLazmall内のアカウントが停止する。
- 時間通りの発送が90%未満
- セラー評価が60%未満
- セラー側落ち度によるキャンセル率10%以上
以上のシステムを用いて、Lazmallは偽造の防止を徹底して行い、顧客の信頼を勝ち取っていった。もちろんローカルセラーについても星評価や口コミで信憑性を確認することができる。
多種多様な決済システム
また多種多様な決済システムも消費者にとっては魅力的だ。タイを例にあげると、タイ国内発行のクレジットカードの信頼性が低く、ECでの決済ができない事が多かった。
それが市場拡大の足枷になっていたが、Lazadaでは支払い方法を増やして顧客を広げて行った。タイ以外の新興国でも信頼できないクレジットカードは多く存在していたがLazamallでは積極的の決済の種類を増やして行った。
※参照元
https://sellercenter.lazada.sg/seller/helpcenter/LazMall-Service-Standards.html
https://techcrunch.com/2017/09/23/sea-files-for-a-1-billion-u-s-ipo/
https://www.techinasia.com/shopees-plan-win-fashion-ecommerce-southeast-asia
https://www.entrepreneur.com/article/326915
https://kr-asia.com/alibabas-lazada-removes-commission-fee-in-spore-to-boost-transaction
今後の展開
当面の競合相手はShopeeである。東南アジアを中心とした、販路拡大の戦いはビジネスモデルの違いから住み分けは出来ているが、覇権争いも起こっている。
2016年、アリババグループ傘下にLazadaが入ったことで、BtoCビジネスモデルはより色濃く反映されている。e-bay傘下のBtoC型ECサイトのQoo10も競合となりえる。
現在、セラーに対する販売手数料無料の優遇措置を取ることでシェアをキープしている。配達インフラは提携先を増やすことや、傘下のLEL Expressのシステムをより効率化すること、そして倉庫内の自動化を行うことで24時間体制の構築し、出荷時間の短縮を目指すことによって徐々に改善されていくだろう。
また、利益率を上げていくには、東南アジア以外からの進出を誘引したり、東南アジア以外への進出をしたりということも視野に入る。購入者と販売者の母数を増やすことでLive upのようなサブスクリプション型のサービスを国によって価格差をつけて提供できるようになる。
東南アジアを母体にするLazadaが東南アジア以外の対外進出に本格的に乗り出せば、Amazonとの覇権争いも本格的になるだろう。
※参照元
https://ascii.jp/elem/000/001/842/1842748/
http://focus.fccsingapore.com/2018/09/17/innovating-supply-chain-logistics-lazada/
https://www.techinasia.com/shopees-plan-win-fashion-ecommerce-southeast-asia