Drivemateはタイのスタートアップである。
サービス概要
Drivemateは個人間で車をレンタルできるプラットフォームを提供している。車の所有者が車を使用しない間、Drivemateを通じてその車を一時的にレンタルできるものである。
日本にあるカーシェアリングサービスの多くは事業者が車両を保有してそれを複数の会員がレンタルシェアするタイプだが、本サービスはP2P、つまり個人間で車両を貸し借りするものである。
日本で類似のサービスを挙げるとすればAnycaなどがある。
企業基本情報
起業家情報
代表:Silratth Sukwatthanasiri (CEO & Co-Founder)、Sikharin Cholpratin(CTO & Co-Founder)、Thanyatorn Thitiseranee(COO & Co-Founder)
出身:Thai
学歴:明治大学(Silratth Sukwatthanasiri )、King Mongkut’s University of Technology Thonburi(Sikharin Cholpratin)、University of California(Thanyatorn Thitiseranee)
会社概要
サービス提供国:タイ
従業員数:50人以下(不確定)
ホームページ:https://www.drivemate.asia/en/
推定資金調達額合計:500,000〜900,000米国ドル(推定)
事業沿革
- 2016 設立
- 2017 500 Startups のタイ版ファンド500 Tuk Tuks およびタイの通信会社 Dtac のスタートアップインキュベータ Dtac Accelerate から、米ドルで「合計6桁台中盤から後半」規模のシード資金を調達
- 2019 NETSOL Technologies(※1)が立ち上げたOTOZ Mobility Innovation Labへの投資を発表。OTOZ Mobility Innovation Labが開発する技術をDrivemateのプラットフォームの強化に利用する。
(※1)NETSOL Technologiesとは
主にグローバルなリースおよび金融業界にサービスを提供するITおよびエンタープライズソフトウェアソリューションの世界的なプロバイダー
※参照元
https://thebridge.jp/2017/10/thai-startup-peertopeer-car-rental-reality-raises-funding
https://www.globenewswire.com/news-release/2019/03/27/1773925/0/en/NETSOL-Technologies-Launches-OTOZ-Mobility-Innovation-Lab-Announces-Investment-and-Partnership-with-Top-Car-Sharing-Platform-in-Thailand-Drivemate.html
設立までの背景
創業者の背景
共同設立者の1人であるThanyatorn Thitiseraneeは当時4歳の子をバンコクのインターナショナルスクール育てており、そこで知り合った海外からの知人からカーシェアリングのアイデアを元に、夫と友人とともに同社の設立に着手した。
海外から来た息子の学校の親たちは、タイ国内で言語が通じない中車を借りることの壁を感じており、そうした問題点を解決するにはカーシェアリングサービスが最適だと考えたのだ。
https://expatlifeinthailand.com/travel-and-leisure/drivemate/
問題点
カギの受け渡しについて。車両を利用する場合はカギの受け渡しが発生するため、所有者、利用者の双方ともに手間がかかる。
今後コネクテッドカー(インターネット接続された車)が増えていけば、所有者と利用者が顔をあわせることなく貸し借りできることが増えるだろう。
個人間の貸し借りということで、何か問題があった際の責任の所在、対応方法などのクオリティが求められる。
過去にAirbnbで起きたような、例えば利用者が車両を著しく汚損・破損した場合のDrivemate側の対応により、今後の市場拡大が左右される可能性がある。
また、同様のサービスはタイ国内にも競合他社が複数社ある。今後海外展開するのかどうかは不明であるが、企業規模を拡大するために国内のシェアをどう奪うか、また海外展開についてどのような戦略をとっていくかが注目される。
サービス詳細
サービスの種類:Drivemateには大きく分けて3つのサービスがある。
1. Drivemate Car (Car Rental)
最もベーシックな利用方法で、通常のレンタカー同様、車の貸出日時と返却日時を指定し、利用者自ら車の保管場所へ行き、所有者と合流して鍵を入手する。
ガソリンを補充して予定時刻になったら車を指定場所へ返却する必要がある。
- 1日レンタル参考料金:Nissan March 2017 600バーツ(約2,000円)
2. Drivemate LIMO(Car + Driver)
これがDrivemateの特徴である。このサービスを選ぶと、Drivemateの専属ドライバー(車の所有者とは異なる)が目的地までの送迎をしてくれる。
- 1日レンタル参考料金:Honda City 2009 700バーツ(約2,400円)
- 8時間保証料金(超える場合は300バーツ/時間(約1,000円/時間)
- 移動距離1日200kmまで(超える場合は7バーツ/km(約24円/km)
3. Drivemate Switch(Car Subscription)
レンタル月額サービス(サブスクリプション)である。料金には自動車保険とカーメンテナンス費用が全て含まれ、追加料金はかからない。
価格帯は車両クラス似合わせつ3つある。どれも乗車距離は無制限で、選んだ車は月に一回まで乗り換えることができる。
- 「Lite」月額13,500バーツ(1,200ccクラス)
- 「Standard」月額25,000バーツ(1,600ccクラス)
- 「Signature」月額40,000バーツ(2,000ccクラス)
価格設定
利用規約によると、レンタル価格はすべて1日当たりの価格で設定されており、その金額は車の所有者が自由に設定できる。(最低価格設定はあり。)Drivemateは個人間でやりとりされた総レンタル価格のうち30%を収益としている。
厳しい審査基準の設定
サイトの利用規約をみても、所有者になるための条件や利用者の条件を始め事細かに規約が定められており、安全対策を万全に整える姿勢がうかがえる。
こうしたきめ細かなサービスも、人々に受け入れられているのだろう。
カーレンタルにつきものの事故対応についても、同社はタイ全土に50以上の支店を持つ有名な国際保健会社「LMG Insurance」と提携しており、利用者によっての安心材料となっている。
利用者の条件
利用者の条件として、過去2年以内に交通事故を起こしていないこと、過去3年間に自動車保険を拒否されていないこと、などがある。
また利用者、所有者共に使用後に口コミ評価がつくため、例えば車を汚して返却したなどの場合は評価に響く仕組みとなっている。
レンタル時には登録したクレジットカードを所有者に提示する(本人確認を徹底する)なども規約で定められている。
罰則について
その他罰則で、下記の通りの定めもある。
- 禁煙車で喫煙した場合の罰則:THB 300(所有者が収集)
- THB 300(収集者所有者)車の内側がひどく汚れている場合
- 借受人が車を拾うために現れない場合、または受取人が借受人がレンタル条件を尊重しないことを見つけた場合、THB 300(所有者が徴収)。
※参照元
https://expatlifeinthailand.com/travel-and-leisure/drivemate/
ビジネスの特徴
タイ45の州で約9,000台の車両が登録されており、車両のモデル数は100を超えるため、利用者がレンタルしたい車両条件にぴったりとあったものを借りられることを売りにしている。
おしゃれをして車で出かけようとした女性が「その日のファッションに、所有する車の色が合わない!」と気づいて、Drivemateでその日のファッションにぴったりのおしゃれな車を借りられるという公式PR動画もある。
これまでのように、単に車を持たない人や旅行者が移動手段のためだけに車を借りるだけでなく、もっとカジュアルに、その日の気分に合わせて好みの車に乗ろう!というアピールポイントがタイで受け入れられているのだろう。
また、Drivemateは企業向けサービスも充実させており、「Drivemate Enterprise」に登録して法人契約を結ぶことにより、企業向け請求書を発行してくれるなど事務手続きの面でもサポートを受けることができる。
今後の展開
今後どこへ向かうのか、競合との戦い方などをかく
同様のP2Pカーシェアリングサービスをタイ国内で提供している会社で「Rent A Car Club」があるが、同社は単に個人間の車両レンタルサービスのみの提供であり、ドライバー手配や月額固定サービスは提供していない。
しかし公式HPは英語や中国語をはじめとする9カ国の外国語に対応しており、海外からのユーザーに強みがあることがわかる。(Drivemateはタイ語と英語のみ対応)
また、タイの「HAUPCAR」は、24時間ペーパーレスレンタルを掲げており、車両にインストールされたアプリを利用してスマートフォンで車のキーを開閉できるため、所有者とのカギの受け渡しが発生しない。(HAUPCARは、P2PとB2B2Cの両方のサービスを提供している。)
こうした競合に今後打ち勝っていかなければならないDrivemateは、ドライバーつきレンタルサービスなど、他社にはない、利用者の潜在的ニーズにあったきめ細かいサービを提供していくことが、今後の競争に勝ち抜くために必要となるだろう。
※参照元:
https://www.dir.co.jp/report/research/policy-analysis/human-society/20181203_020485.pdf